樺太地方・地誌

東岸南部

大泊

亜庭湾に臨み、海陸の要衝(稚泊連絡船の終点・東海岸線の起点)を占め、貨客の集散が多い開港場(冬季には砕氷船が就航)である。市内は半円状を呈して市区整然、パルプ工場・養狐会社等が業績を挙げ、鰊の集散も多い。大泊支庁と無線電信局とがある。

豊原市

樺太第二の都会で鈴谷平野の中心部にある。政治(樺太庁所在地)・文化の中枢で、井条型(アメリカ式)の街路が整然とし、大廈高楼が少ないが、防風・風致林を有する点に新開都市の面目がある。経済的には大泊に次ぐが、なおパルプ・洋紙工業等が盛大である。

小沼

豊原市の北部に位し、養狐業で名高い。川上炭田線の分岐点。

川上

炭田の中心地。その優良な石炭は島内の燃料を供給する。

落合

内淵川沿岸の河岸段丘に於ける農業的聚落から発展した製紙工業地で、樺太鉄道(私設)の分岐点。

栄浜

東海岸鉄道線の終点で、オホーツク海に臨む漁港を兼ね、冬季、氷下漁業が行われる。

西岸南部

海馬島

能登呂半島の西方に位置する火山島で、海驢の棲息地として知られ、鰊・鱈・昆布の漁利が多い。

白主

天然の不凍港で、鱈漁の中心である。

本斗

本斗支庁の所在地で、西海岸線の終点に当る。不凍港である上に築港が完成したから、将来性が多い。

真岡

樺太第三の港市で、西海岸線と豊真線との会合点。不凍港で開港場をなし、本島冬の門戸として重要性がある。早く漁業の中心をなしたが、パルプ工業が興るに及んで産業都市となった。町は段丘下に発達している。町の南方多蘭泊はアイヌ人の集団地である。

野田・泊居

西海岸線は野田を北上し久春内を終点とする。共に製紙・パルプ工業で名高いが、特に泊居の背後に位する大栄炭山は、中央炭山の北端として重要である。

東岸北部

敷香

落合と共に最寒地で毛皮の集散、製材・マッチ軸木の製造で知られる。敷香支庁の所在地で、樺太鉄道の終点に当る。また附近の凍土帯にはオロッコ・ギリヤーク人等が放牧している。

海豹島

膃肭臍の群棲地で、夏季には視察者が多い。監視員がいてこれを保護し、近年官営の下に一部が猟獲されている。

知取

知取河岸段丘上の町で、樺太鉄道が通じ、知取炭坑からの供給でパルプ工業が盛大に行われている。

元泊

支庁所在地で、附近に鰊・鱒・鮭の好漁地がある。

西岸北部

恵須取

大平炭田からの供給によってパルプ工業が勃興し、急速に発達した。

名好・安別

前者は名好川に沿い、伐は流材で知られる。後者は日露国境に近い要津で、共にその背後は大平炭田の一部である。